大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(う)1052号 判決

一 所論は、いわゆる関連事件の管轄は、事件が併合審判されることを前提としてのみ認められる、との基本的立場に立つて、原審が本件各被告事件と大屋智靖らに対する被告事件とを併合せずに審判したのは違法であるなど種種論難する。

この点につき原判決は、要するに、刑事訴訟法六条は各事件の弁論を併合(同法三一三条)して審判することを要件としているとは解されない旨を、文理上ならびに実際上の理由を付して説示しているのであつて、右の結論は当裁判所もこれを支持することができる。

そもそも刑事訴訟法上の土地管轄制度は、各裁判所(国法上の意義における)に事件を適正に配分し、恣意的な取扱を防止することを主眼としているから、特定の事件に対する管轄裁判所はできるだけ自動的、画一的に決定されることが望ましい。しかし、つねにこの原則を貫くことは必ずしも適当ではないので、同法はいわゆる関連事件の管轄とこれに伴う移送の制度を認めている。関連事件の移送は、同法九条、六条によつて受送裁判所にも管轄が認められる事件について、主として訴訟経済と当事者の訴訟上の利害を勘案して裁判所が適当と認めるときに限りこれをなしうるが、移送決定が確定して関連事件が受送裁判所に係属した以上は、これを、もとの固有の管轄事件と併合して審理するか分離して審理するかは、刑事訴訟法三一三条の運用として、当該公判裁判所の健全な裁量により決すべきものである。

また、関連事件の移送を受けた後においては、所論のいうような、真実発見、訴訟経済、被告人の訴訟上の利益保護などの訴訟目的は、訴訟の段階や進行状況に即応した併合、分離の措置のほか、訴因制度ないし各種の証拠調の方法等を適時、適切に運用することによつてその実現を確保すべく、また確保しうるのであつて、固有の管轄事件と弁論を併合して審理しなければこれらの諸利益が確保できないとする理由は存しない。現に本件の場合、前記大屋智靖らに対する被告事件と弁論を併合しなかつたことにより被告人らの訴訟上の利益が侵害された形跡は、全記録を精査してもこれを見出すことができない。

……………(中略)……………

二 所論は、原判決が被告人伊藤を除く他の被告人五名の本件各被告事件と大屋智靖らの各被告事件との間に刑事訴訟法九条一項三号所定の関連性が認められるとした証拠には適法な証拠能力を欠くものを含みその証明がなされたとはいえない旨主張する。

しかし、同号に規定する要件事実はもとより罪となるべき事実ではなく、その存在は厳格な証明によることを要しない。現に、原裁判所がこの点に関して掲げる証拠のなかに、検察官が弁護人らの管轄違の申立に対する意見書に添付して提出した書面があるが、これらの書面は管轄権の立証に供せられるにとどまり、本件公訴事実認定の資料とならないことは、原裁判所が第一二回公判期日において弁護人に釈明しているとおりである。そして、右各書面のほか、原裁判所の挙示する原審証人藤田雄幸の供述(ただし被告人高橋の関係では同証人に対する尋問調書)(以下原審証言という)及び同松原好之の供述を総合すれば、前記大屋らに対する各被告事件と被告人伊藤を除くその他の被告人五名に対する本件各被告事件との間には、原判決が「管轄違の申立について」の項の二において認定判示するような相関関係が認められるのであつて、これによれば、右両事件が刑事訴訟法九条一項三号の定める場合に該当することはゆうに肯認することができる。この点につき原判決に事実の誤認はない。

これを要するに、原判決が弁護人らの管轄違の申立について判示するところは、当裁判所にもおおむね正当として是認することができるのであつて、原判決に所論のごとく不法に管轄を認めた違法ないし訴訟手続の法令違反の瑕疵はなく、論旨は理由がない。

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